何もなかった広場がけたたましい屋台街となり、
一気に活気を帯びる。

美穂「あのう、…焼き鳥すきですか?」
「…はぁっ?」

美穂「食べたあっ!」
辻 「あっ、すいません、食べちゃって。
   いや、お腹すいちゃってて、つい、」

辻 「!ちょっと、どこにしがみついてるんですか!」
美穂「かんぞっ。(肝臓をかわいく言った)」

「置いていこう。肝臓一個、またはその記憶の代金」

黒壁「おい、徳盛!お前、前からややこしい言い方して
   たよなぁ、誰かに口からぼろっと、こぼしたなぁ!」
徳盛「ちち、違いますよ!こぼしてなんかいないよ!

「マーラータン、ゴイクォン、ユイシャンロースー、
  チャーハン、カオソーイ、ミミンガー、トン足、サイウァ、
  ピンパー、ピンカーイ、ホルモン鍋、川汁白菜、
  特性肉ちまき、麺はセンニヤイあるかな?」

田中「美穂ちゃんのあきらめきれない気持ちは
   よくわかりますでもね、彼はもういないんです」

田中「それは藤井君で、滝ちゃんじゃないでしょう。
   いいですか、現実を見ましょう。未来をみるんです」

桂田「何が何だか全くややこしい。肝臓だ腎臓だ心臓だ、
   誰んだ俺のだお前のだ。え?臓器の移植だ売買だ
   喰ってるとか、こういう店の前でやるなよ!」

吉本「心臓も記憶するってのは俺も聞いたことがある」

吉本「今から勝負だ。我々には出会ったこともないが
   段々フレンドリーに感じてきた滝ちゃんの!
   好きであった料理を、元彼女の姉ちゃん、書いてちょ」

吉本「スパーッと記憶、蘇らせてちょ!」

かどわき「食は記憶に残る印象派よ、
     そんな強烈な料理出さずに料理人ちゅう?」

黒壁「食らえ味のパンチ、ぶち砕けろっ、細胞壁!
   ミトコンドリア!リポ核酸!ゴルジ体!」

徳盛「伸びるー伸びるー山羊の腸ー。
   薄くー薄くーフグ刺しみたいにー、なるー」

吉本「答えを言いましょう。滝ちゃんの一品とは・・・」

美穂「今の!箸の置き方!」
辻 「へっ!」
美穂「滝ちゃんそっくり!」

「あなたの心臓移植よ。いえ、交換ね。
  あたし、移植コーディネーターやってるの。
  あなたのことは聞いているわ」

美穂「ちょっと、また勝手なこと言う人来た。
  『探したよ、辻君』って、気あるんじゃないの?」

「商売するだけが裏じゃない。
  商売しなくていい自由もあるのが裏よ」
「裏?どうしてそこまで?」

「ここは先へ進めないけど反転はするの」

音楽と共に屋台という屋台は反転し、
店の構えは極彩色から白色へ変わって
「吉本医院」などという医者の看板を掲げた。

吉本「あいてて、転んで骨折っちゃったよ。おっ、通りすがり
   にこんな屋台が。ちょっと診てもらおう」

かどわき「透析はつらいなぁ、お金はないんだけど
     移植さえできたらなぁ」
めい「ああ、よかった、やっぱり屋台って
   怪しくっていかがわしいね」

桂田「いやあ、みなさん、
   ネットの海は深かったよ広かったよ。
   私の好きなエビやタコはいなかった!」

桂田「丸島医院はやぶだ、医療ミスがあった、人殺した、
   生首売った、もういろいろ」

「この前は車エビの写真見せて
  皮膚固まってますねぇって
  軟膏出したんデスヨネ、ボク」

高倉兄弟「胸、触ったんだろ、いいよもう!」
黒壁「人体の危険を感じろよ、輸血失敗した、
   レントゲン間違った、
   そっちの方が怖いだろう!ちちくらい我慢しろーっ!
   俺も我慢してんだー!

ドクター達、なぜか赤髭をつける。
そして何故か哀愁あるハミング

タカクラクリニックのベッドが用意される

「もう一度言います。無理なことだったと受け止めて!
  約束の方を重んじて下さい。
  あなたは食い散らかしの王です。
  食い散らかしたままでいいんだから」
「くそっ!俺は食い散らかしの王だ。
  食い散らかしておしまいかい!…記憶の代金だな!」

「一片たりとも心臓の記憶を奪われずに取れ!
  それが記憶の代金だ!」

高倉弟「心臓に着いた記憶のみ
    取り出すことはできるのか?」

手術用照明はパラソニについてある裸電球だ。
用意するドクター達。桂田はあわててる。
王が横たわる。

「…肋骨をはずします。…うん?…これは!
  ちょっとこれは!」
ドクター達「ああ、劉先生!」
(心臓の部分が崩れ落ち、機械の姿が現れる)

ハーツ「御免なさい。心臓に残るあなたの記憶も、
    王の記憶も、私が亡くしたの」

「クーラーボックスでしょ。目印はあります。
  食い散らかしの王、それまであなたの心臓、
  このまま貸して下さい。帰ってきたら交換しますから」
「探すのはいいが、ついでにもう少し俺の心臓の記憶、
  思い出してくんねぇかな」

「じょうだんじゃない、何きれい事言ってるの?
  外国では子どもが臓器のために
  当たり前に売買されてるわ」
黒壁「そういう臓器ビジネスに、
   オッケー出したくない俺たちがいるんだろ!
   あんたもそう言ってたじゃないか!」

製作・劇団異国幻燈舎

協力・社会福祉法人大木会 もみじ寮あざみ寮

作・演出 宮沢十馬


戻る